【三セク協だより第63号掲載】地域と共に歩むあいの風とやま鉄道の取り組み

あいの風とやま鉄道株式会社

代表取締役社長 伍嶋二美男

 

はじめに

 当社は、平成27年3月の北陸新幹線金沢開業に伴い、西日JR本から経営分離された旧北陸本線の富山県区間を営業区間とする、県、市町村、民間企業の出資により設立された第三セクターの鉄道会社です。開業以来、安全・安心を第一としながら利便性向上に努め、昨年の3月には開業10周年という大きな節目を迎えることができました。

 当社はこれまで多くのご支援をいただきながら、地域の皆さまに寄り添った取組みを進めてまいりました。利用状況に応じた運行ダイヤの編成、新型車両の整備や交通ICカード「ICOCA」の導入、「高岡やぶなみ駅」や「新富山口駅」といった新駅の設置、エレベーター整備などの駅舎のバリアフリー化、列車位置情報サービスである「あいトレ」による運行情報の発信、観光列車「一万三千尺物語」の運行等、利便性やサービスの向上に取り組んできました。

 また、沿線市町のイベントとタイアップした企画きっぷの発売や情報サイト「ぷち旅」による駅周辺の紹介、県内プロスポーツチームや地元の高校とのタイアップ等の地域と連携した取組みも進めてきました。こうした取組みの推進により、令和5年度の運賃収入額は開業以来過去最高となっています。今回は当社の取組みを一部紹介いたします。

ダイヤ編成(パターンダイヤ、増便等)

 毎年3月にダイヤの改正を行い、利用状況に応じた利便性の向上を図っています。最近の改正では、令和6年3月のダイヤ改正で日中時間帯の高岡~富山駅間でパターンダイヤを導入し、翌令和6年3月には県東部区間において範囲を拡大しました。ほかにも、他社線との接続の改善や増車・増便を行うことで、通勤・通学利用はもちろん、日常での利用や観光での利用もしやすいダイヤになっています。

 特に、開業前と比べ大幅に運行本数を増やすことにより、乗車する列車の選択肢が増え、利用者の満足度向上につながっています。

駅舎のバリアフリー化

 開業以来、バリアフリー基準に対応した2つの新駅(高岡やぶなみ駅及び新富山口駅)の設置に加え、滑川駅及び福岡駅にエレベーターを設置しました。現在、越中大門駅においてエレベーターの設置工事を行っており、令和8年度末に供用開始となる見込みです。

 駅舎のバリアフリー化は、高齢者や障害をお持ちの方、ベビーカーを利用される方、大きな荷物を抱えた方など、利用者からのニーズが高く、今後も、国や県、沿線市町と協力して整備を進めていく予定です。

沿線地域との連携

 沿線市町からのご要望に応じ、沿線市町で開催されるイベントとタイアップし、当社線の各駅からイベント会場の最寄駅までの往復運賃が1,000円となる企画きっぷ「市町イベントタイアップきっぷ」を発売しています。

 カターレ富山(サッカー)、富山GRNサンダーバーズ(野球)、富山グラウジーズ(バスケットボール)、KUROBEアクアフェアリーズ(バレーボール)、アランマーレ富山(ハンドボール)とタイアップを実施しており、1日フリーきっぷや当社ファンクラブ会員証を提示することで、割引価格で観戦チケットが購入でき、お得にスポーツ観戦が楽しめます。

 開業10周年を迎えた昨年は地元の高校とのタイアップも実施し、開業10 周年記念デザインを制作いただいたほか、毎年開催している当社の駅スタンプラリーでも同高校とタイアップし、駅周辺散策マップを制作いただく等、地域と協力して沿線の魅力発信を行ってきたところです。

この他、駅舎、駅周辺施設や店舗等を紹介する情報サイト「ぷち旅」を当社WEBサイトに開設する等、地域の活性化や当社線の利用増に資する取組みを進めています。

開業 10 周年記念デザイン(1日フリー切符)

開業 10 周年記念デザイン(1日フリー切符)

駅周辺散策マップ

駅周辺散策マップ

あいの風とやま鉄道ファンクラブ

 あいの風とやま鉄道ファンクラブ会員数は、4,320人/社(令和7年10月末時点)となっています。会員数は、コロナ禍で一時的に落ち込んだものの、現在は右肩上がりで増加しています。ファンクラブ会員には様々な特典をご用意しておりますが、たとえば、会員限定イベントの「ファンクラブ見学会」では、521系運転体験やパンタグラフ操作体験、413系行先表示器方向幕の操作体験等、鉄道会社ならではのコンテンツを体験いただいており、ご参加いただいた会員様から好評を得ております。

 ファンクラブへの加入は、マイレール意識を醸成し、当社線の利用増にもつながるため、今後も積極的に取り組んでいきたいと考えています。

運転体験(ファンクラブ見学会)写真

運転体験(ファンクラブ見学会)

マスコットキャラクター「あいの助」との記念撮影写真

マスコットキャラクター「あいの助」との記念撮影

観光列車「一万三千尺物語」の運行

雄大な立山連峰を眺めて走る車両/観光列車「一万三千尺物語」写真

雄大な立山連峰を眺めて走る

 平成31年4月に運行を開始した観光列車「一万三千尺物語」は、サービス内容のリニューアルを重ね、運行しています。列車名は、富山湾の水深1,000mから標高3,000mの立山連峰との高低差4,000mを尺貫法で表したもの。富山~泊駅間を往復する1号「富山湾鮨コース」と富山~黒部~高岡~富山駅間を走る2号「越中懐石コース」の2種類のコースがあります。

 車内は氷見の森林で育った「ひみ里山杉」をふんだんに使った、温かみあふれる造りとなっており、立山連峰や田園風景を眺めながら、1号では富山湾鮨を、2号では富山の老舗料亭「五万石」
の懐石料理をお楽しみいただけます。

 また、沿線ではボランティアのお手振りもあり、旅に彩りを与えてくれます。

1号で提供する「富山湾鮨」写真

1号で提供する「富山湾鮨」

広い窓から眺めを楽しめる

広い窓から眺めを楽しめる

写真コンテスト及びカレンダーの製作

当社では毎年写真コンテストを開催し、入賞作品等を富山駅(改札内及び南北自由通路)で展示しております。また、ご応募いただいた作品を活用してカレンダーを制作していますが、カレンダー掲載作品をさらに多くの方に見て楽しんでいただけるよう、今年1月からはカレンダーの写真(表紙、各月、裏表紙)を毎月弊社公式Xで投稿し、好評を得ております。

2026 年版カレンダー

2026 年版カレンダー

近隣の鉄道会社との連携

 令和6年10月に、IRいしかわ鉄道、ハピラインふくいと連携して、北陸3県連携キャンペーンによる3県を跨いだ観光列車「一万三千尺物語紀行」の運行や北陸3県連携デジタルスタンプラリーを行ったほか、令和7年12月には、えちごトキめき鉄道、IRいしかわ鉄道と連携して、旧北陸本線並行在来線3社の開業10周年記念及び能登半島地震復興支援を目的とした「えちごトキめきリゾート雪月花」による上越妙高駅(新潟県)から金沢駅(石川県)までの直通運転を行いました。これらの取組みは、県外からの注目度も高く、当社線のPRにつながりました。

一万三千尺物語紀行の運行写真

 一万三千尺物語紀行の運行

利用促進アンケートの実施

 利用促進に向けての取組みをご紹介してきましたが、開業10周年を機に、さらなる利便性向上等を図るため、昨年12月10日から2月10日まで利用促進アンケートを実施しました。今後、結果を分析し、お客様からのご意見も反映させながら更なる利便性向上、利用促進につなげていきます。

JR城端線・氷見線の経営移管

 富山県西部を南北に走るJR城端線・氷見線は、概ね3年後の当社への経営移管に向けて、鉄道事業再構築事業が本格化しており、今後ますます県や沿線4市、JR西日本と十分な協議、調整を行っていく必要があります。この事業は、当社のさらなる成長、発展につながるだけでなく、県西部地域の活性化に大きな波及効果をもたらすものであり、着実に推進していきたいと考えています。

JR城端線・氷見線の経営移管路線図

路線図

おわりに

 令和6年3月の北陸新幹線の敦賀延伸や、概ね3年後に予定されているJR城端線・氷見線の当社への経営移管など、当社を取り巻く環境は大きく変化してきています。これからも安全運行を第一としながら、「県民の皆さまの日常生活の足」として、通勤・通学の利用者をはじめ、当社線を利用いただいている全ての皆さまから「愛される鉄道会社」となるよう、地域とともに歩んでまいります。

外観デザイン

内装デザイン