山形鉄道株式会社
代表取締役社長 中井 晃
大正12(1923)年4月22日に荒砥までの全線が開通し、令和5(2023)年4月22日に開業100年を迎えました。
1.開業100周年事業の実施
(1)プレイベント等
開業100年の前年に、自治体や住民の協力で関連事業を実施しました。令和4(2022)年7月に100周年ロゴマークを募集し、265作品の中から1次審査で3点に絞り、10月の長井線まつりで山形鉄道に乗車された方の投票により決定しました。ロゴは、ヘッドマークや各イベントで使用しました。
8月には100周年を迎える駅周辺を綺麗にしようと、周辺の皆さんの協力でスポーツゴミ拾いが実施されました。11月には、南陽東ロータリークラブと漆山小学校の共同事業により、「おりはた駅」の外壁を綺麗にし、地元の鶴の恩返し伝説に因み、鶴が飛び立つシルエットを描いていただき、小学校全生徒で描いた鶴の恩返しの6場面のパネルを駅の待合室に掲げてもらいました。また、長井市の版画家で、棟方志功の兄弟弟子であり日本版画院審査委員長も務められた菊地隆知さんによる、長井線の各駅の版画展を開催しました。12月には鮎貝駅開業100周年事業として、駅前でマルシェ、小学生のLEDメッセージキャンドルや駅舎のイルミネーション装飾の他、冬の記念花火と花火を見学する記念臨時列車を運行しました。

ロゴマーク
(2)100周年事業
全線開通100周年フリー切符の発売:2,000円分のクーポン付きの一日乗り放題デジタル切符を1,000円で販売。
①車内アナウンスをあなたの声で:車内アナウンスを一般の方にお願いし、日本語と英語の他、長井線へのメッセージも放送しました。お父さんが朝早く出勤するため見送れないお子さんが、お父さんの降りる駅のアナウンスを担当したケースもありました。
②フラワー長井線と白鷹町資料展:鉄道建設工事の様子、開通後の荒砥、鮎貝駅周辺の変遷などの資料や写真を紹介、展示されました。
③全線開通100周年記念イベント(荒砥駅):4月22日に荒砥駅で開業記念のコンサートや100歳の方から、0歳の赤ちゃんに列車の運転用マスコンが渡される100年継承式、ミニSL、ATカート乗車、車両基地見学が行われ、マルシェも開催されました。
④4両連結100周年記念列車の運行:沿線2市2町の花である紅花、あやめ、ダリア、さくらをラッピングした車両4両編成の臨時列車を運行しました。
⑤広田泉写真展、トークショウ(羽前成田駅):鉄道写真家の広田さんの1周忌にあたり、写真展と写真家の米屋こうじさんのトークショウが開催されました。
⑥駅の思い出エピソード発表会(南陽市):駅の思い出を募集し、5月に発表と表彰が行われました。
⑦長井線風景印めぐり(9郵便局):沿線の9郵便局が長井線の駅と郵便局名を入れた台紙をつくり、各郵便局で切手を購入し風景印を押印してもらい、全ての風景印を集め、長井駅の入場券を購入すると全線開通特別記念切手がもらえる共同事業を開催していただきました。
⑧開業100周年記念アマチュア無線交信証明書発行:アマチュア無線クラブにより4月22日の開業イベント時に、交信できた方へ100周年記念交信証明書を発行しました。
⑨荒砥鉄橋!ありがとうコンサート:東海道本線の木曽川橋梁として架橋されたイギリス製のダブルワーレントラス橋が、長井線全線開通時に荒砥鉄橋として移設されたもので、現役橋梁として日本最古のものです。この鉄橋に感謝し荒砥鉄橋の下の河川敷で感謝のコンサートを9月10日に行いました。
⑩ローカル線プロレス2023:100周年を記念し、10月1日に3年ぶりに山形鉄道の車内でプロレスが行われました。列車内での2試合の後、長井駅前の特設リングで観戦試合が行われました。

開業100周年 べにたかと列車

開業100周年 4両増結列車
2.次の時代に向けた新信号システムの導入
(1)現在の信号システム概要
現在の運行システムは、連動駅が5駅あり、4駅が第1種継電連動、1駅が第2種継電連動で、閉そく方式は単線自動閉そく方式を採用し全線に軌道回路を持ち、CTC(6DE形)制御により運転を行っています。
また、現在の信号システムは、平成9年に設備の老朽化及び経営コスト削減を目的により、連鎖閉そくから単線自動閉そくに変更し、運転保安の向上及び駅取扱要員の効率化を図るため更新がなされました。閉そく方式を自動閉そくに採用したことにより、JRと接続のある今泉駅以外は、ARCに設定し運転士が光発振器で進路要求を行うことで、運転指令業務の効率化を図っています。

出発要求光信号機
(2)新信号システムの概要
新信号システムは、無線式列車制御システムを採用し、これまで軌道回路が担ってきた列車位置検知は、列車速度、衛星測位等を利用した車上装置で、伝送が担ってきた沿線通信回線を携帯電話回線に置き換えるものです。
本システムはシンプルな構成で、機能を中央制御装置と車上装置に集約することにより、地上設備を大幅に削減します。また、装置間の通信に携帯電話回線を利用し通信ケーブルを不要とすることで、メンテナンス作業の負担軽減を図るものです。列車が走行する際、全区間で連続的な速度制御を実施することにより、既設設備よりも安全性の向上を図ります。
次世代のシステムは、これまでの信号システムと同等以上に列車運行の安全性と保安度を向上させると共に、地上設備を軽減することでメンテナンスコストの削減を見込んでいます。また、列車の位置が正確に把握できることで、お客様に細やかな運行情報提供が可能となり利用者への利便性の向上を図るものと期待しております。
終わりに本システムが地方鉄道の運行に寄与できることを目標に工事進めていきたいと思います。

統合型列車制御システム