愛知環状鉄道株式会社
総務人事課 企画担当課長 藏地 弘典
1 はじめに
愛知環状鉄道は、開業が昭和63(1988)年の国鉄から転換した鉄道会社です。名古屋から東へJR・名古屋鉄道・リニモなど各路線が伸びていますが、社名のとおり、これらの路線を南北に接続し、名古屋の東側の「環状」の役割を担っています。
営業キロは45.3km、駅数は23駅で、愛知県と岡崎、豊田、瀬戸、春日井の沿線4市、民間等による第三セクターとなります。

<沿線地図>
2 利便性向上のための設備投資と利用者数
開業時は全線単線でダイヤは1時間あたり概ね2本、利用者数は、開業5年後頃に安定してからは700万人規模で横ばいでした。
平成17年開催の愛知万博の主要なアクセス交通機関となったことを契機に、一部複線化・車両増備などの輸送力を増強する投資を実装し、1時間あたり4本の運転が可能な設備に充実しました。また、平成19年には、トヨタ自動車(株)の本社への通勤者向けに、更なる一部複線化・車両増備などの設備の拡充を図り、主要な通勤区間でシャトル列車の運行を開始しました。
沿線4市の人口は123万人と多く、自動車産業をはじめとする民間企業に加え、高校や大学等が41を数えるなど社会経済活動の活発な地域であること、設備増強に平行し、平成13年以降数次にわたって実施したダイヤ改正により、現在のようなほぼ終日1時間あたり4本の運転とし、利便性の向上を図ったことと相まって、利用者数は右肩上がりで増え、令和元年度には1,833万人になりました。
また、他の鉄道やバスと乗り継ぐお客さまも多く、列車に乗る際の利便性向上を目的とし、平成31年度にICカード乗車券を導入しました。利便性向上のための設備投資が、利用者増加という成長を生む好循環が続いていました。新型コロナの感染拡大までは。

<年度別 年間輸送人員の推移>
3 コロナを経て地域連携の取組を強化
新型コロナの感染拡大を契機に、令和2年度の利用者数はコロナ前の69.7%まで落ち込み、少ない費用で少しでもお客様に戻っていただく対策が必要となりました。そのような中で開始したのが、地域との連携によるラッピング車両など、地域の方々ともう一度、愛知環状鉄道に注目していただくための取組です。
⚫️ラッピング車両は、令和3年度に「岡崎無双!!家康公トレイン」、令和4年度に「ジブリパークをイメージしたラッピング車両(※)」と「大河ドラマ「どうする家康」ラッピングトレイン」、令和6年度に「ラリージャパンラッピング車両(※)」の運行をしました。(※のラッピング車両は、現在も運行中。)

<ジブリパークをイメージしたラッピング車両>

<ラリー・ジャパンラッピング車両>
⚫️イベント列車の運行は、令和5年から地域イベントの岡崎ジャズストリートと連携し、ジャズの生演奏が楽しめる「岡ジャズトレイン」の運行を年1回開始しました。令和6年に名鉄観光サービス(株)の旅行商品として販売を開始。この商品は、列車内でジャズ生演奏を楽しめる奇抜さが評価されJRの鉄道旅行商品アワード「鉄道 OF THE YEAR」のパーソナル部門賞(個人旅行)を受賞しました。

<岡ジャズトレイン(ヘッドマーク装着)>

<列車内での演奏の様子>
⚫️令和7年度は、当社の発展の契機となった愛知万博の20周年に当たるので、愛知万博時の万博キャラクター等をシールで装飾した復刻車両を、3月から9月まで運行しました。愛知万博の理念と成果を次世代へつなぐこと等を目的とし、愛知県をはじめとした実行委員会により愛知万博20周年記念イベントが開催されましたが、当該委員会と連携した取組となります。

<愛知万博時の復刻車両>

<ヘッドマークシールのデザイン>
4 イベントと連携した企画乗車券の販売
今年度の新たな取組として、沿線等で開催される大きなイベントと連携した企画乗車券の販売を開始しています。イベントへのアクセスとして、当社線の利用が見込める「全日本うまいもの祭り」、「全日本ぎょうざ祭り」、そして愛知県で3年に1回開催される「国際芸術祭」の入場券等ときっぷをセットにした企画乗車券を販売しています。
地域イベントとして、沿線等で開催される大きなイベントと連携した企画乗車券の販売を開始しています。イベントのアクセスと連携した販売促進は、当社がゼロから新たな事業を立ち上げるより効果が大きく、良い取組と考えています。
5 沿線小学生向けチラシの配布
今年度の新たなもう一つの取組として、当社の安定的な運営と沿線地域の発展に寄与するため愛知県と沿線4市で構成する愛知県環状鉄道連絡協議会により、沿線の小学生を対象に、公共交通の重要性等を紹介するとともに、沿線ウォーキングイベントを周知するチラシを配布いただけることとなりました。
当社線の将来のご利用者になり得る小学生の皆さんに、当社を知っていただける機会ができたことを嬉しく感じています。

<小学生向けチラシ(表)>

<小学生向けチラシ(裏)>
6 おわりに
地域の様々な主体として連携して、沿線で行われるイベント等を駅や車内づり、車内ラッピングなどで広報することは、鉄道会社が持つアセットを効果的に活用できる取組です。そして、地域イベント等をPRすることで、地域の活性化と当社線利用の増加につながることから、地域連携は、地域と当社がウィンウィンになれる取組です。
こうした地域連携の取組を通じて、地域の皆様に愛知環状鉄道をより身近な存在と感じていただき、「地域から親しまれる」鉄道会社となれるよう尽力してまいります。