第三セクター鉄道等協議会のお知らせ

【三セク鉄道だより第64号掲載】長鉄検修区の日常

長良川鉄道株式会社

検修区主任 加藤 健

■はじめに

日本三大清流の一つ長良川。自然豊かな美濃の山々の間を川の流れに沿うように岐阜県美濃加茂市の美濃太田駅を起点とし、同県郡上市の北濃駅までの路線延長72.1kmを結ぶのが長良川鉄道です。日常生活の移動手段であることを前提とし、それとは別に非日常に注目した「列車そのものの観光資源化」という形で導入された観光列車「ながら」は、ついに今年10周年を迎えました。今回の寄稿では、検修区員である私の視点から日々の業務について書いていこうと思います。

当社は、平成10年から導入された「ながら」を代表とする300型が5両。平成19年から導入された「長良川わくわくたんけん号」や「GJ8マン(ジー・ジェイ・エイトマン)トレイン」のある500型が3両。令和4年導入の国鉄時代の塗装を再現した「急行おくみの号」や今年導入された「清流号」のある600型が3両。

この3種類、合計11両を所有しています。私たち検修区の職員はこれらの車両を検査・修繕を行うことが業務となります。

261001【長良川鉄道㈱】 <写真①>長良川鉄道㈱地図

長良川鉄道(株)の地図

■~1日の流れ~

朝、出勤するタイミングで運転指令と話をし、前日の夜から朝までの間に車両の異常が発生していないか、運用変更に伴う使用車両の変更が行われていないか確認します。その後、検修日誌にて前日の作業内容を確認します。

始業時に朝礼を行い、その日の作業内容を出勤者全員で共有します。列車検査を行う車両、給油・清掃をする車両、異常が起こり修繕しないといけない車両、観光列車の運行の有無などを確認します。朝礼終了後、早速外に出て作業を開始します。車両の入区・出区の時間はあらかじめ決められており、それに合わせて作業を行います。車両入区後、運転士に何か異常がなかったかを確認します。同時に、給油・清掃を行います。列車検査予定の車両はこのタイミングで列車検査をします。車両の入区は基本的に午前に集中しているため、午前中は入区の対応で作業が埋まります。

昼休憩を挟み、午後は車両の出区の他に搭載部品の整備や故障車両の修理を行います。また、次の作業に取り掛かりやすいように故障部品の整備や整理整頓をして異常時のための準備をしておきます。そして、運転指令や機関区当直と夜から翌日の運用を確認します。そして、終業時刻まで何事もなければ退勤・・・という形になります。

261001【長良川鉄道㈱】 <写真④>ナガラ601号

ナガラ601号

261001【長良川鉄道㈱】 <写真③>ナガラ501号

ナガラ501号

261001【長良川鉄道㈱】 <写真②>「ながら」302号

「ながら」302号

■~月の流れ~

先ほど述べた日常業務をこなしつつ別の作業として車両の定期検査が入ってきます。3か月に一度の月検査では、実施項目に沿った点検を行っていきます。オイル交換や各種フィルターの清掃および点検、車両や台車の高さやブレーキ系統の空気圧の測定などの作業を一人が担当となって行います。また、他の作業員も入出区以外の手の空いた段階でそれぞれサポートに入ります。こうして2日間で一つの車両の点検を行います。

■~1年の流れ~

1年を通して季節に応じた点検や整備もしていかなければなりません。春、近年言われるようになった酷暑のために冷房機器の整備をします。導入された時期が新しい600型の3両は冷房機器を1両につき2台搭載しており、全国的にみても屈指の気温である岐阜県美濃地方の夏の暑さにも対応できています。

問題になるのが300型と500型です。導入した当時の気温に対応できる形で冷房が1両につき1台装備されたため、現代の35度を超え、40度に迫るような猛烈な暑さを処理しきれないことが増えてきました。冷媒の圧力測定や送風装置のファンの確認など、細かく整備して対応はするのですが、性能や使用年数から考えるとなかなか厳しいと言わざるを得ません。遮熱フィルムなど別の方向からアプローチするか、この猛暑にも対応しうる冷房に乗せ換えるのか・・・対応はこれからも考えていくしかないです。そうして春から夏の終わりにかけて冷房との格闘を終え、秋になると今度は暖房の整備に入ります。当社の白山長滝駅のある郡上市白鳥町長滝はニュースで報じられるレベルの豪雪地帯です。となると、もちろん寒さもとても厳しい土地です。真冬の最低気温は氷点下15度まで下がることもあります。この寒さに対応するために秋から暖房設備の整備点検を行います。

機関冷却水を車内に回し、その熱を利用して温風を送るシステムなので、漏れのチェックやモーターの異常がないかを点検します。こうしたサイクルを通じて1年間運行に支障が出ないよう日々検査に努めています。

261001【長良川鉄道㈱】 <写真⑤>300型冷房ユニットS

300型冷房ユニット

261001【長良川鉄道㈱】 <写真⑥>300型機関予熱器S

300型機関予熱器

■~今後の展望~

観光列車「ながら」が導入されてから10年が経過し、一昨年には車両内にトイレが設置されました。車両の改良は進んでいますが同時に経年劣化も表面化してきています。外装の塗装の剥離と内装の劣化が進んでおり、どこかのタイミングでもう一度整える機会を設けなければならないと考えています。車両を使用し始めてから約30年が経過し、次の全般検査を行い、これから更に10年使用を見越していくのかの判断が問われると思います。