【三セク協だより第57号掲載】今日も元気に走っています

1. 信楽高原鐵道のあゆみ

信楽高原鐵道は、日本で一番大きな湖「琵琶湖」のある滋賀県の甲賀市内を運行する路線です。昭和8年、地場産業である信楽焼の運送等を担うため、国鉄「信楽線」として現在のJR草津線貫生川駅から信楽駅までの14.7kmで開業されました。

昭和18年には、第二次世界大戦のためレール、マクラギが供出され、営業休止となりましたが、終戦後、地域住民により再敷設され昭和22年営業再開できました。国鉄末期においては、特定地方交通線・第三次廃止対象路線となりましたが、昭和62年第三セクター「信楽高原鐵道会社」として再スタートすることができました。

しかしながら、平成3年5月14日、地元信楽にある陶芸の森で開催された「世界陶芸展」の来場輸送のため、増発していたJR西日本の直通列車と弊社列車が正面衝突するという大事故を引き起こしてしまい、7ヶ月の運休後、安全体制を立て直し、12月8日から運転再開することができました。

また平成25年4月には鉄道事業再生構築事業計画を進め、甲賀市と公有民営化による上下分離方式へと移行しましたが、その矢先の同年9月、台風18号の影響を受け、杣川橋梁流出など線内に甚大な被災を受け、翌年11月まで1年2ヶ月の間、運休しました。

このように多くの苦難がありましたが、地域の皆さま方や国、県、市長のご支援・ご協力により、その都度再開することができ、今日に至っています。

2. 線区の概況

全線非電化の単線で、閉そく方式は「スタフ閉そく式」と全線が1閉そく、1列車が行き来している線区です。起点の貴生川はJR西日本の駅、終点の信楽は有人駅で、本社および車庫を併設しています。途中の駅は紫香楽宮跡、雲井、勅旨、玉桂寺前の4駅、全て無人駅となります。列車本数は1日15往復の30本、概ね1時間間隔で運転し、平日の通勤・通学時間帯や多客時は2両、その他時間帯は1両のワンマン運転を行なっています。

ご利用の主体は高校生の通学利用で、輸送人員全体での通学定期の割合は6割を占めています。通勤定期と合わせると7割が定期ご利用のお客さまであり、地域、特に通学(小中学生も一部利用)にはなくてはならない移動手段となっています。

3. 沿線のご紹介

起点の貴生川駅(水口町)を発車後暫くすると右にカーブし、並走するJR草津線と別れますと杣川橋梁を渡ります。左手に田んぼが広がり、その一角に「うしかい田んぼアート」が夏から秋にかけてお楽しみいただけます。

この辺りから33‰の上り勾配が約5kmにわたり、半径200mの曲線が連続する山間を標高330mまで軽快に走り抜けます。途中、後方の眼下には水口町内の街並みが広がり、左手には「おいでやす信楽」の看板とたぬきとカエルの置き物がお客さまをお迎えします。

旧小野谷信号場付近を通過すると、今度は下り勾配が役2.5km続き、紫香楽宮跡駅に到着します。この駅から信楽町内に入ります。駅近辺には奈良時代の中期に聖武天皇が造営した宮古「紫香楽宮」の史跡や、周辺に関係する遺跡が残っています。

次の雲井駅は昭和8年、国鉄信楽線開業当時から残る駅舎で、撮影などに使われたこともあります。雲井駅から信楽駅までは概ね平坦となり、雲井駅を出ると直ぐに日雲踏切を通過しますが、実はこの踏切、日雲神社の参道にある珍しい踏切です。その後、勅旨駅を過ぎ、玉桂寺前駅の手前で約30mの橋梁を通過します。

令和3年8月、国の重要文化財に指定されました「第一大戸川橋梁」です。昭和29年、当時の国鉄が技術の粋を集めたプレストコンクリート構造の単桁橋で、今なお高い品質を保つ価値が高いコンクリート構造物です。

玉桂寺前駅は駅名のとおり、大戸川を挟んだ対岸に高野山真言宗の「玉桂寺」があり、信楽の弘法さんとして親しまれています。駅からは大戸川に架かる吊り橋「保良の宮橋」を渡ります。

当駅は昨年5月、駅のイメージアップを図るためクラウドファンディングにより、昭和レトロ調に駅のラッピングを施しました。多数のご賛同をいただきましたことをお礼申し上げます。また、駅の裏手はハイキングコースとなっており、令和元年から2年に放映された朝ドラ「スカーレット」の撮影場所もあり、駅、吊り橋周辺も含め撮影スポットとして人気のエリアです。

終点の信楽駅に到着です。標高285m、関西有数の寒冷地にあり、冬季はマイナス10度を下回る日もあります。信楽は日本六古窯の一つの信楽焼の町で、ホームでは多くのたぬきがお出迎え、駅前にも高さ5.3m、胴回り6.6mの大たぬきが季節に合わせた衣装でお待ちしています。また、信楽朝宮地区は全国5大銘茶「朝宮茶」の産地でもあります。町内の窯元、陶芸ギャラリー等の散策をお楽しみください。

4. 増収・誘客の取り組み

(1)車両ラッピング

①リサ・ラーソン(平成27年度、令和2年度)

陶芸の森で開催されたスウェーデンの陶芸家「リサ・ラーソン」の展示会とタイアップ、展示会との共通チケットも販売しました。

②忍トレイン(平成29年から)

甲賀市が忍者のまちとしてPRする一環として実施、311、312号車の2両が運行しています。

③スカーレット(令和元年)

朝ドラ「スカーレット」の放映に合わせて、市町を挙げて観光誘客、利用促進の一環として記念乗車券の販売なども行いました。

(2)企画・記念乗車券、オリジナルグッズの販売

①企画・記念乗車券

毎年恒例の「干支親子切符」、信楽焼で作成した「oh!福かえる切符」や「合格祈願切符」の他、周年やイベントなどに合わせた記念乗車券を販売しています。

②オリジナルグッズ

人気の商品は懐かしの陶器の「汽車士瓶」です。各駅の「駅名標」や「行き先サボ」のキーホルダーも定番商品となっています。その他、クリアファイル、Tシャツ、模型など各種商品に加え現在は、鉄印帳と鉄印および関連商品を追加販売させていただいたおかげもあり、全国から来駅されるお客さまが増えています。

(3)イベント列車の運行

①サンタ列車(平成11年から)

例年、お子様連れのご家族や近隣の保育園の皆様には大変ご好評いただいているイベントで、大学生のボランティアなどにより車内でクリスマスをお楽しみいただいています。併せて信楽ホームのたぬきもサンタ衣装でお出迎えします。

②その他の列車

2〜3月には「ひな祭り列車」、6〜7月には「七夕列車」、11月には信楽『たぬきの日』に合わせ、「たぬき列車」を運行しています。また、昨年から地元の保育園児のお絵かきを車内に展示した「ギャラリートレイン」も運行しています。

(4)地域との連携

①信楽駅前陶器市

例年ゴルデンウィーク期間中に、駅前周辺を会場に「駅前陶器市」が開催されます。町内の各店舗が出店され、リピーターのお客さまも多く、道路も混雑することから鉄道のご利用も好調です。弊社も出店し、レンタルサイクル、グッズ販売を行なっています。

②うしかい田んぼアート

田んぼアートは、牛飼地区の地域活性化と高原鐵道の利用促進を目的に取り組んでいただいています。田植え、稲刈りも募集し、子供さんの体験にも大変人気があり、列車が通過する際は参加者全員が手を振り、お見送りします。車窓から見える田んぼアートに乗車のお客さまからも好評です。

5. 最後に

弊社のご利用は通学輸送が主体ですが、近年、少子化の影響を大きく受け、通学提起については年平均4%程度の減少が続いています。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークやライフスタイルも変容し、定期のご利用は今後も厳しい状況が想定されます。

一方で、地域での観光誘発の取組みが活発に行われ、市内観光の周遊コースとして、鉄道利用をお楽しみいただいています。今後も、沿線の景観整備や地元開催のイベントとコラボ等により定期外のお客様によりお楽しみいただき、ご利用増に繋げていきたいと考えています。

信楽高原鐵道は、安全運行第一に一人でも多くのお客さまに安心してご利用いただけるよう、社員一丸となり「今日も元気に走っています」

信楽高原鐵道株式会社 https://3sec-tetsudou.jp/company/77