【三セク協だより第57号掲載】元気のある地域の楽しい鉄道を目指して

1 はじめに

令和2年1月に発生した新型コロナウィルス感染は、蔓延・鎮静を繰り返しながらも経済との両立を図るということで行動制限も緩和され、鉄道を利用するお客様も増加傾向にあります。

このような中、令和4年7月、国土交通省における「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」において、沿線自治体と連携し持続性の高い地域交通をどのように構築していくか方向性が示されました。

今後、第三セクター鉄道においても地域との協働は大きな課題であり、継続的に取組んでいかなければなりません。

2 令和4年度の取組み

公共交通シンポジウム

明知鉄道が第三セクターとして発足した昭和60年から令和2年まで35年間の恵那市の人口は、全人口が2割減、0才から14才までの年少者人口は6割減、一方、65才以上の高齢者人口は2倍に増加し、定期利用者として大半を占めている高校通学生は6割以上の減少となっています。

この状況を踏まえ、沿線の高等学校、小学校、壮健クラブなどと交流を図り、「グリーン会員券、ジュニア会員券」の発行をはじめとして公共交通の利用をPRしています。また、観光需要の要として運行している料理列車を軸として地域イベントに合わせ企画切符の発売など、利用促進に取組んできました。

令和4年9月17日 明知鉄道沿線地域公共交通活性化協議会が主催し、中部運輸局、岐阜県、恵那市、中津川市、岐阜県バス、タクシー協会が後援する「明知鉄道沿線地域公共交通シンポジウム2022」が開催されました。このシンポジウムは、「みんなで育てよう!公共交通!~地域に根付いた持続可能な『お出掛け環境』の実現~」として、地域公共交通を考えるきっかけとするものでした。

この中で、昭和62年から明知鉄道が取組んでいる料理列車のご利用状況、気動車運転体験や駅舎の改修等、これまでの実績を報告しました。最後にまとめとして「地域の特産品や観光資源を活用し地域の魅力を深化させ、地域を元気にする…。その一翼を担い続けます。」と伝えました。

また、パネルディスカッションでは、各々パネリストは今後に向けての決意表明があり、私は『地域との「連携」』と記し、更に沿線地域との連携を深化させることを宣言しました。

なお、基調講演では森雅志 前富山市長は、都市政策と交通政策を融合させ一体的に取り組むことにより市政に好影響があったと講演されました。この取組みは今後の公共交通の在り方に大いに参考となる実例であり、来場された多くの皆様が感銘を受けられていました。

開通88周年記念事業

明知鉄道の前身である国鉄明知線は昭和9年6月に開通し、今年が88周年(米寿)にあたることから、これを記念して様々な取組みを展開しました。

6月には「おかげさまで開通88周年」として記念切符、鉄印、バッジの発売、明智駅、恵那駅における写真展の実施についてホームページなどで公表しました。

記念切符については6、7月の土日限定の発売でしたが、好評であったことから8月の夏休み期間、令和5年1月、2月の土休日、追加発売を決定しました。記念バッジについては限定販売とすることに加え、営業関係社員が業務中に着用することで社員への意識づけとともにお客様に周知することとしました。

また、ヘッドマーク、ワンマン横サボも88周年記念仕様として運用しました。

高純度バイオディーゼル燃料(BDF)B30実証運行

近年、豪雨による土砂流入など軌道災害に直面している現状を踏まえ、CO₂排出削減により温暖化対策に取組み、持続可能な社会を目指すことが必要であるこという認識から、バイオディーゼル燃料(BDF)の利用を検討していました。このような状況において、令和4年6月、高純度BDF製造に取組み始めた恵那市内の業者から実証運行に関する提案を受けました。

この業者が製造する高純度BDFはミドリムシ由来ものではなく、家庭などからの廃食油(天ぷら油)を高純度BDFに再生し利用するものです。このため製造コストを抑えることが出来ることに加え、ごみの減量、エネルギーの地産地消につながることから、実施に向け検討をすすめました。

現在、経済産業省は軽油に対してBDF 5%以下の混合(B5と呼ばれています)については、揮発油の品質の確保に関する法律に基づきその使用を認めています。一方、5%以上の混合燃料の使用に関しては、関係監督官庁との調整が必要でした。

これらの調整を経て、令和4年12月から1年間の高純度バイオディーゼル燃料B30(30%混合)の実証運行を開始しました。この実証運行では、エンジン、フィルターなど既存機器への影響や走行性能に関するデータ収集し、経済産業省に提供することで混合上限5%制限を引き上げるようとするものです。

今後、バイオディーゼル燃料の利用が広がり、温暖化が抑制されることで自然災害の減少につながればと考えます。

沿線学校の応援

岐阜県立恵那南高校の生徒の多くが明知鉄道を利用していることもあり、学校運営協議会にオブザーバーとして参加しています。高校では、令和4年度「地域連携による活力ある高校づくり」の充実に向けて取組んでおり、地域の魅力を知り、地域課題を発見・解決する学習を推進しています。令和4年10月には「ローカル線応援プロジェクト交流学習会」を立ち上げ、「名松線勝手に応援団」の取組みで有名な三重県白山高校、協力校である浜松学芸高校と交流により「明鉄 応援し隊!」と銘打って高校生が主体的に活動を始めました。ありがたいことです。

12月には駅の特徴や高校生の何気ない日常を撮影し、思いを込めたキャッチコピーが記されたポスターが出来上がりました。『「君のとなりに」最近一緒に帰れないね・・・・』などなど。まさに輝いている高校生らしく青春を表現してあり、大いに感激しました。尚、完成したポスターは、お客様にご覧いただけるよう各駅に掲出してあり、大好評です。

3 今後に向けて

コロナ禍により大きく落ち込んだお客様のご利用は、感染対策が緩和され増加傾向となっていますが、沿線地域の人口減少は続いています。多くのお客様にご利用頂くためには、利便性を確保したうえで楽しい列車であることをPRしつつ、沿線地域をいかに元気にするかが課題です。

今後とも「寒天」、「きのこ」など、地域経済と連携して地元食材を取入れた料理列車に磨きをかけるとともに、地域のイベント、景観、文化など観光資源とタイアップして地域活性化に取組んでいきます。

尚、地域鉄道の利用は目的地への移動手段としてだけではなく、車内や駅待合室がコミュニティを提供する場となり、人々のコミュニケーションツールとして活用されています。また、小学校をはじめとして保育園などの校外活動に活用されており、将来を担う年少者の社会性を育む機会を提供するなど、重要な役割を担っていると考えています。

引き続き、沿線地域の皆さんに利用価値や有効性を伝え、活用して頂ける鉄道を目指してまいります。

明知鉄道株式会社 https://3sec-tetsudou.jp/company/57