【三セク協だより第58号掲載】「レールバス」として愛されて37年

あまてつの概要

 甘木鉄道(愛称「あまてつ」)は、佐賀県基山町にある基山駅から福岡県朝倉市にある甘木駅を結ぶ東西13・7km、2市3町の平坦な地形を最高速度65km/hで、約30分をかけてゆっくり走ります。朝夕は、地元4つの高校をはじめ、福岡・筑後地域の100を超える中学、高校、大学、専門学校に通う学生たちや通勤の人たちでにぎわっています。一方、昼間は、窓を開けると心地良い風を体に浴びながら、四季折々の田園風景や、桜並木、ポピー、コスモスの花、街並みなどの景色を楽しむことができます。

あまてつの歴史

 あまてつは、1939年(昭和14年)に陸軍大刀洗飛行場の軍需物資輸送用として開通し、1986年(昭和61年)3月まで、国鉄甘木線として運行されていました。戦後は、主にビール工の貨物輸送が主力となって運行されていましたが、1981年(昭和56年)の国鉄再建法に基づく第一次廃止対象路線選定を乗り越え、1986年(昭和61年)4月に第三セクター方式の鉄道会社「甘木鉄道」として運行を開始しました。初代車両はバス車体工法を用い、バス用部品を多用した「レールバス」と呼ばれた富士重工業製のLE–Car が導入されました。その後、他社製の車両に代替されましたが、現在でも地元の皆様からは親しみを込めて、「レールバス」と呼ばれています。

あまてつの魅力

 あまてつの魅力の一つは、福岡都市圏や久留米・鳥栖地域への交通アクセスの良さがあげられます。あまてつの起点の甘鉄基山駅はJR九州鹿児島本線基山駅構内にあり、約3分の乗り換えで、甘鉄甘木駅からJR九州博多駅まで約1時間で行くことができます。また、甘鉄小郡駅から西鉄大牟田線小郡駅まで、約5分の乗り換えで、甘鉄甘木駅から西鉄福岡駅まで約1時間、西鉄久留米駅まで約40分で行くことができます。さらに、甘鉄大板井駅から高速大板井バス停まで、約4分の高速バスへの乗り換えで、甘鉄甘木駅から天神まで約70分、博多まで約85 分で行くことができます。

あまてつの沿線

 あまてつの沿線には、別名つつじ寺として親しまれ、また、紅葉の名所としても有名な「大興善寺」、隠れた名湯「ぬる湯」が特徴の「基山ラジウム温泉」、桜・紅葉が必見の筑前の小京「秋月」、日本最古と言われる神社「大己貴神社」、秋に約1000万本のコスモスが咲き乱れるキリンビール福岡工場にあるキリン花園(約7ha)、薩摩街道松崎宿の名残が偲ばれる「旧松崎旅籠油屋」、木蝋業により財を成し銀行を設立した豪商の邸宅「平田家住宅」と「平田氏庭園」境内にカエルの石像や置物など1万点以上がコレクションされているという 通称かえる寺として有名な「如意輪寺」、恋人の聖地 通称七夕神社として有名な「媛社神社」、隠れキリシタンゆかりの歴史ある教会「今村天主堂」、南北朝時代の名将菊池武光の銅像がある大刀洗公園など見どころ満載です。実は、あまてつの11の駅のうち今隈駅を除き10の駅が昭和に建てられています。中でも、甘木駅、太刀洗駅の駅舎は、旧国鉄時代(昭和14年4月28日) の建築が今も残っており、レトロ感漂う駅となっています。

あまてつの努力

 あまてつでは、利用促進のために、開業以来、小郡駅の移設をはじめ、立野駅、大板井駅、今隈駅、山隈駅の4つの新駅の設置(計11駅)、車両の増備4両(計8両)、行き違い設備の増設2箇所、レールの重軌条化、PC枕木化などを実現し、運行の安全確保や輸送力の増強に努めてきました。

 特に、平成15年4月からは、朝夕の通勤・通学の時間帯における15分間隔の運行を実現し、現在、平日42往復(土日祝日34往復)で運行しています。コロナ禍におきましても利用客の足を確保するため、平日42往復(土日祝日34往復)を続けてきました。

あまてつへの支援

 沿線自治体も筑前町大刀洗平和記念館、朝倉市秋月博物館など誘客施設等の整備、駅前広場でのマルシェや花火大会などのイベントを開催するとともに、主要な5駅(甘木、太刀洗、山隈、西太刀洗、松崎)に無料の駐車場(計448台分)、立野駅を除く10駅には無料の駐輪場を整備するなどして、あまてつと一体となって乗客を増やす取り組みをしています。 

 また、甘木線を残すために奔走し、現在、あまてつの応援団である「甘木鉄道を育てる会」は、昭和62年7月に設置され、季節のイベント列車(たなばた列車、コスモス列車、クリスマス列車、あまぎKappo列車、きやまKappo列車など)の飾付け、駅舎の飾付け(正月、七夕、クリスマス)、こどもの日イベント、JR九州ウォーキング、小中学生を対象とした列車運転体験など熱心な乗客獲得活動をしています。

 さらに、あまてつと福岡県、沿線自治体では、昭和61年6月に「甘木鉄道推進協議会」を立ち上げ、あまてつの安定経営の推進(基金の積み立て・ 運用、協調補助)、安定経営及び課題解決に向けての調査研究、あまてつ及び沿線情報発信(沿線ガイドブック、カレンダーの作成)を行っています。

あまてつの若手社員

 あまてつの運転士は、駅長との兼務者を含め22名で、定年は65歳です。これまで、主に国鉄やJRのOBが大半を占め、平均年齢は60歳を超えていました。しかしながら、近年、大手鉄道会社の再雇用、定年延長などの影響により、転職による入社希望が無くなってしまいました。そこで、これから、多くのベテラン運転士の退職を控え悩んだ末、自社育成へと方向転換することとしました。早速、令和2年4月、運転士を目指す新規学卒者の採用を行いました。運転免許取得について、大手の鉄道会社に頼ることなく、自社育成の始まりです。まず、運輸課の先輩が教材を手作りし、学科・実技の受験対策を行いました。検修、施設、電気課の先輩社員も教育・指導に加わりました。社員一丸なって取り組んだ結果、令和2年度2人、令和3年度1人、令和4年度2人、受験者全員合格を勝ち取ることができました。今後も、毎年、新規学卒者の採用と自社育成を続け、運転士の確保に努めていきたいと思っています。また、施設の技術部門においても、令和4年度新卒者を採用しました。今後も計画的に新卒者を採用し、技術の継承を図ってまいります。

 今回、20代前半の社員が多数入社したことにより、想定外のことができるようになりました。これまで、手を付けられなかったSNSによる情報発信です。 

 まず、令和4年度からTwitter(X)とLINEを始めました。若者の目線で、日々新たな情報が発信されています。フォロワー数も5,600を超えました)。

あまてつの未来

 開業当初76万人であった利用客数は、3年目の昭和63年には、100万人を超え、翌平成元年度以降、平成16年(119万人)、18年(110万人)、コロナ禍の令和2(106人)、3年度(117万人)を除き、年間120万人を超える多くのお客様にご利用いただいています。昨年、令和4年度は、約129万人の利用があり、コロナ禍前の令和元年度(約144万人)の90%まで回復しました。運賃収入も、約2億1,560万円で、令和元年度の96%となりました。これからは、これまで以上に利便性や効率性を高め、もっと広範囲からの定期利用者を獲得するとともに、観光関係者との連携を深めることにより、過去最高だった平成6年度の146万8千人を超える150万人を目指したいと思っております。幸い、来年4月から6月にかけて「福岡・大分デスティネーションキャンペーン」が開催されます。あまてつも、その一翼を担い、全国からお越しの皆さまを沿線の観光地へとお運びします。

 いよいよ、2年後の令和7年度から8年をかけて、順次車両更新します。奇しくも、新車両のお披露目が開業40周年と重なります。これからも、平成30年1月に策定した「甘木鉄道中長期ビジョン」を念頭に置きながら、「利用しやすい鉄道」「親しみやすい鉄道」「魅力ある鉄道」「安全・安心な鉄道」という4つの将来像の実現に努め、安心・安全な地域住民の移動手段として皆様に愛され親しまれるとともに、沿線の観光や地域の活性化に欠くことのできない公共性の高い交通機関として定着し続けれるよう社員一丸となって安全運行に努めてまいります。

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